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~二回戦迫る~ 医務室のベッドの上で、メディスン・メランコリーは目を覚ました。 何故だか、頭がズキズキする。ハンマーでぶん殴られたような鈍痛だ。 「う…うーん…?ここは…」 「気が付いた?」 目を開けると、そこには彼女にとって見慣れた顔があった。 緩いウェーブがかかる、碧の髪。可憐な面立ちには、穏やかな微笑み。 風見幽香―――<四季のフラワーマスター>の二つ名で呼ばれる、大妖怪。 「あれ…幽香?ここ…どこ?」 「医務室。貴女、頭を打って運ばれたのよ」 「頭…?そういえば、嫌な夢を見たわ。赤いチンピラが私に向けて脳天直撃セガサターン…あれ?」 限りなく現実に即していそうな悪夢であった。 「夢にしてはやけにリアルだった…」 「そう…酷く魘されてたわよ。怖い夢だったのね。可哀想に」 「あ…もしかして、ずっとここにいてくれたの?」 「勿論よ」 幽香はにっこりと、まるで大輪の向日葵のような笑顔を咲かせた。 「貴女は私の大事なお友達だもの、メディ」 「えへ…あ、そういえばトーナメントは!?」 「そろそろ一回戦は全部終わるわ。私の試合から全部すっ飛ばしたということね」 「えーっ!?じゃあ、一回戦は全然見れなかったって事じゃない!…ま、いいか」 むくれるメディスンだったが「二回戦には間に合ったもんね」と気を取り直した。 「次も勝ってね、幽香。私、たくさん応援するから!」 「ふふ、ありがとう…でもね」 幽香はメディスンの額に手を翳し。 「ごめんなさいね…次の試合、貴女には見せたくないの」 「え」 ピンっ、と、人差し指で眉間を弾いた。頭蓋を揺らされ、メディスンは再び昏倒する。 「もう少し、眠っていてね。少なくとも、サンレッドとの闘いが終わるまで」 「―――ほんと、酷い妖怪ね。貴女」 隣のベッドから、非難の声。 風見幽香の一回戦での対戦相手―――蓬莱山輝夜。 包帯でぐるぐる巻きにされ、ほとんどミイラ女と化した彼女は、刺々しい口調を隠そうともしない。 「自分を慕ってくれる小さな女の子に、もっと優しくしてあげようとか思わないのかしら?」 「あら、お姫様ったら。それは誤解というものよ?」 むしろ、これが優しさだ―――風見幽香はそう答えた。 「次の試合…この子には、ちょっと刺激が強いものになるかもしれないからね」 「何よ、それ」 「分かるのよ、同類は…」 「はあ?どういう意味?」 「サンレッド―――彼は、私と同じ種類の生物よ」 「同じ種類…」 「そう。戦闘を求めるという点では星熊勇儀とも似ていたけれど―――また違う意味で、私と彼は同じ」 幽香は、口元を三日月の形に歪める。それはメディスンに向けていた微笑とは、まるで違う。 闘争を愉悦とする、狂戦士の笑みだ。 「必要とあらば、暴力の行使に対して、まるで忌避を感じない―――そういうタイプよ」 「…………」 「だから―――サンレッドとの闘いは、見せたくない。この子には」 「少しばかり、えげつない真似もする予定だし―――ね」 それ以上は語る事なく、風見幽香は医務室を後にする。 残された輝夜は理解できない、という顔でその後姿を見送っていた。 「…分かる必要なんかないぞ、輝夜」 輝夜の隣で同じくミイラ女と化していた藤原妹紅は、そうのたまう。 なお、ここでいう隣とは<隣のベッド>ではなく、文字通り<同じベッドで一緒に寝ている>のである。 負傷者に対してベッドの数が足りないので、一つのベッドを二人で使っているのだ。 決して百合的あざとさを狙ったわけではないので、誤解なきように。 「あいつは…別だ。種族の違いだとか、そういった話じゃない。在り方そのものが―――隔絶している」 そして、その幽香が認めている サンレッドは己と同じ類なのだと。 「たった一つ言えるのは―――この闘い。どちらかが完全に動かなくなるまでは、終わらないだろうな」 ―――そして幻想郷最大トーナメント開催より、数時間が経過した。 『さあ、夜も更けてまいりましたが、トーナメントはまだまだ続く!』 実況・射命丸文の声が夜空に轟く。 『一回戦・全16試合!どれもが目を瞠る名勝負でした!次より始まる二回戦ではどのような闘いが繰り広げられる のでしょうか!?この清く正しき射命丸文も、仕事を忘れて興奮してきました!』 その言葉を、レッドさんはといえば、ぽかんとした顔で聞いていた。 「え…おい、どういうこった。全然見た覚えがねーんだけど…」 「何を言ってるんですか、レッドさん。あんなに凄い試合ばかりだったのに」 ヴァンプ様は奇怪なものでも見るような目つきである。 「第五試合なんて、会場の皆が涙したぐらいだったじゃないですか、ねえ」 「ああ。秋静葉・穣子の姉妹対決という地味にも程がある試合が、あんなに盛り上がるなんてなあ」 魔理沙が感慨深げに語る。 「第七試合も、まさかの番狂わせだったわね。あの土着神の頂点・洩矢諏訪子を、因幡てゐが怒涛のトラップ攻勢に よって破るとは、予想も出来なかったわよ」 アリスも興奮冷めやらぬといった面持ちである。 「続く第八試合…流石は我等が紅魔館の主レミリア・スカーレットの面目躍如といったところね。レミィにとっては 最悪の相性といえる地底の太陽・霊烏路空を、真っ向勝負で打ち倒すとは思わなかったわ」 と、パチュリーは親友であるレミリアを称える。 「神奈子さんとか魅魔さんとか、ムチャクチャ強かったよねー。相手が可哀想になるくらいだったよ」 「そして迎えた一回戦の最終試合…八雲紫。あの能力は、やはり無敵にして不可侵か…」 「うんうん。紫ちゃんってば、あれはすごすぎだよー」 ジロー・コタロウの兄弟も顔を見合わせて頷き合う。 茫然としていたレッドさんだったが、気を取り直してポン、と手を打った。 「あ、ああ、ああ!思い出した、思い出した!第十三試合とか、どっちもマジやばかったよなー。ははは」 その言葉に対して返ってきたのは「え?」と言わんばかりの、皆からの胡乱な眼差しであった。 「何言ってるんです、レッドさん。その試合は魔界神・神綺が一瞬にして終わらせちゃったじゃないですか。さては 余所見でもしていましたね?」 妖夢がジト目でレッドを見つめる。 「確かに。相手との力の差がありすぎて、盛り上がりには欠けるきらいがありましたね」 「もう、レッドさんったら!ちゃんと見てなきゃダメじゃない!」 「そうですよ!いずれは闘わなきゃいけない相手なんですから、しっかり見とかないと」 川崎から来た仲間達(※約一名は悪の将軍です)にまで非難され、レッドさんは力なく肩を落とした。 「しゃ…釈然としねえ…!」 『―――では、ここで小休止を取ります。二回戦の開始は30分後を予定しておりますので、しばし御寛ぎ下さい』 「じゃあ私、今のうちにトイレに行ってきますね」 「いちいち言うなよ。何処にでも行っちまえ」 「も~、何で怒ってるんですか、レッドさんったら」 「いーから行けよ。どーせ混んでんだから早く並ばねーと、休憩が終わっちまうぞ」 それは大変と、ヴァンプ様は急ぎ足でトイレへと向かうのだった。 「兄者。ぼく、ジュース買いに行ってもいい?」 「構いませんが…お前、お金は持っているんですか?」 「大丈夫だよ。ゆゆちゃんちにいる間は、たくさんお手伝いしたから、いっぱいお小遣いもらったんだ。ろーどーに よってちんぎんを得たんだよ!」 「そ…そうですか」 ちょっと気まずそうに顔を伏せるジロー。ついでにレッドさんも一緒に顔を伏せた。 「なら行ってきなさい。くれぐれも迷子になどなるんじゃありませんよ」 「ラジャー!」 「ジュースだけ買ったら、すぐ戻ってくるようになさい。ウロウロして迷ったなどとなったら、許しませんからね」 「オーケー!」 元気よく、コタロウは駆け出した。それを見送るレッドさんとジローさんの顔は、暗かった。 「ろーどー…」 「ちんぎん…」 心なしか、周囲の視線が痛い。妖夢などは完全に<この真っ赤なヒモコンビが>という目付きである。 「…怯んではいけませんよ、レッド。ここは我々が真っ当に社会的生活を営んでいるという事実を、はっきりと主張 すべきです」 「お、おう。そうだな」 そして、二人は声を張り上げた。 「お、俺は世界の平和を守るのが仕事なんだよ!相手、ヴァンプだけど…」 「わ、私もミミコさんの護衛という立派な仕事がありますとも!遅刻率はほぼ100%ですが…」 ―――墓穴を掘る労働をした二人だった。賃金は、なし。 「ふー、レッドさんの言った通り、混んでたなあ」 ハンカチで手を拭き拭き、ヴァンプ様はトイレを出て一息ついていた。 「しかし広いなあ、この闘技場。私ったら方向音痴だから、迷子になっちゃいそう…あれ?」 ふと、辺りをキョロキョロと見回す。 「あ、あれ…私、どっちから来たのかな…?」 たらり、と汗が背中を滑り落ちたその時。 「―――少し、いいかしら?」 「へ?」 ―――彼女は、真正面から堂々と声をかけてきた。 「あら、ごめんなさい。いきなりで驚かせちゃったかしら?」 「あ、いえいえ。そんな事は…あれ?」 ヴァンプ様は、その人物の顔に見覚えがある事に気付いた。 「あなた、風見幽香さんじゃないですか?次のレッドさんの対戦相手の!」 「ええ、そうよ。あなたは…ええと、何ていったかしら?」 「はい。私、レッドさんの宿敵で悪の組織フロシャイムの幹部・ヴァンプ将軍と申します」 「そう。ヴァンプ将軍ね」 彼女は―――風見幽香は一歩、ヴァンプ様へ近づく。 ヴァンプ様は、気付かない。 自分が今、幻想郷でも最悪の部類に入る存在と、接触してしまっているという事実に。 「あなたがサンレッドと一緒にいる所を見かけたけれど…随分と仲がいいみたいね?」 「ええ、まあ。友好的な敵対関係を結んでおりますので、ははは」 「そう。そうなの」 幽香は笑う。 太陽に向けて咲き誇る向日葵のように明るく、それでいて刺々しい荊を持つ薔薇のように剣呑に。 そして。 「そんなあなたに―――少し、やってほしい事があるの。大丈夫。とても簡単な事だから」 獲物を見つけた、食虫植物のように。 ―――その頃、まさに人の海と化した売店にて。 コタロウは迷子だった。 ジュースを買ったついでにそこらの売店を覗いているうちに、完全に現在地を見失ってしまったのである。 本来、彼ら兄弟の間には強い共感能力があり、お互いの居場所は離れていても分かるのだが、これだけ多くの雑音が 混ざった状態では、互いがよほど強く念じないと上手く機能しない。 「ま…まずいよ。これは」 だからといってアナウンスで迷子の案内など頼もうものなら、後で兄からどのような折檻を受ける事になるか。 『お前という奴は~~~~~!だから買うものだけ買ってすぐに戻って来いと命じたでしょう!何故に兄の言う事を 聞けないのです!何!?八つ目鰻の蒲焼きが美味しそうだった?ええい、この阿呆め!肉体と精神の鍛練が足りない からそのような俗なモノに目を奪われるのです!どうやら私は、お前を甘やかしすぎたようですね…今日からはその 弛んだ性根を叩き直してやります!まずは100kgのバーベルを持ち上げながらウサギ跳びで幻想郷を一周!』 などと、キャメルクラッチをかましながら叫ぶ兄の姿がありありと脳裏に浮かぶ。 何かないか、この絶対的な危機を回避するための名案は…! そんな事を考えながら立ち止まっていたせいで、人混みに背中を押された拍子にジュースを落としてしまう。 ―――しかし。 次の瞬間には、落としたはずのジュースは一滴たりとも零れることなく、何事もなかったかのようにコタロウの手に 納まっていた。 「あ、あれ?」 目を白黒させるコタロウ。 「あ…ありのまま起こった事を話すよ!<ぼくはジュースを落としたと思ったら持ってた>!」 「その通り。催眠術だの超スピードだの、チャチなものでは断じてありません―――我が忠実なる下僕の、恐るべき 能力の片鱗ですわ」 ふと気付けば、そこにコタロウとさほど変わらぬ年頃に見える少女が立っていた。 その背後に突き従うは、メイド服を着た見目麗しき従者。 幻想郷最強の吸血鬼―――<永遠に紅い幼き月>レミリア・スカーレット。 そして、彼女の最も信頼する部下である<完全で瀟洒な従者>十六夜咲夜(いざよい・さくや)である。 「あ…レミリアちゃんだ!久しぶり、元気だった?後ろにいるのは誰?すっごい美人さんだね!」 見知った顔を見るなりこれである。周囲にいてその一幕を見ていた者達は、一様に顔を蒼褪めさせた。 吸血鬼レミリア・スカーレットの評判は、非常に剣呑で物騒なものだ。 傲岸不遜の唯我独尊。 屍を積み上げ嗤う、吸血姫。 事実、彼女は上級妖怪の例に漏れず非常に好戦的で、なおかつ人間に対する友好度も極めて低い。 少しでも怒らせようものなら、こんな少年など一瞬で首を刎ねられるだろう――― だが、そうはならなかった。 レミリアは怒るどころか、心からの友愛と畏敬をその顔に浮かべてスカートの裾をつまみ、恭しくも洗練された仕草 で、コタロウに頭を下げる。 「賢者よ。今宵、拝謁が叶いし事は無上の喜び。我が血は未だ浅き脈動なれど、赦されるのならばどうか、汝の高貴 なる流れと共にあらんことを」 野次馬達は予想もしていなかったレミリアの態度にざわめくが、レミリアにとっては当然の事だった。 賢者イヴ―――<真祖混沌>と並ぶ最も古き始祖にして、月下に生きる牙持つ者達の女神。 それは、自尊心と自負心の塊であるレミリアにとっても例外ではない。 そしてコタロウはその転生体にして、いずれは新たな<賢者>として覚醒する運命を背負っている。 ならばこそ、この程度の礼儀と礼節は当然―――少なくとも、レミリアはそう考える。 されど、コタロウはそんな事を知る由もなく、きょとんとしていた。 「えっと…なんか、難しくてよく分からないけど、ぼくと一緒にいたいって事かな?」 「はい。あなたさえ御赦し下さるのならば」 「もー、そんなに堅苦しくしなくてもいいよ」 コタロウは、笑顔でレミリアの手を取った。吸血姫はやや戸惑いながらも、その手を握り返す。 「兄者達もいるから、皆で一緒にトーナメントを見よう。ね?」 「―――はい。御供いたします、賢者よ」 「ケンジャじゃないよ、ぼくは望月コタロウ!兄者がつけてくれた、立派な名前なんだからね」 「ならば…コタロウとお呼びしても、よろしいでしょうか?」 「当り前じゃん!友達なんだから、遠慮はなしだよ」 コタロウの中では、いつの間にやらレミリアと友達だったらしい。 馴れ馴れしいにも程があるが、レミリアは心底嬉しくて堪らない、とばかりに顔を綻ばせた。 「では、改めて…コタロウ。御一緒させていただきます」 「あ…でも、どうしよう。兄者のいる所、分かんないや」 「はぐれてしまったのですか?」 「うん…あ、いや!ぼくが迷子になったんじゃないよ!兄者の方が迷子になっちゃったの!これ、ホント!」 ジローさんが聞いていたらバックドロップをかまされそうなセリフであった。 レミリアはというと、それを信じたのかどうか、ただ「それは困ったものですね」と首肯した。 「ですが、問題はありません。望月ジローなら、私が探しましょう」 「え、ほんとに?」 「はい。この闘技場程度の広さならば、一度でも出会った事のある者の気配など何処にいても探れます」 「うわー、頼もしいな!ぼく、レミリアちゃんの友達でよかったー!」 「ふふ、ありがとうございます」 「あ、そういえば、レミリアちゃんの後ろにいる綺麗な人は誰なの?何だかさっきから黙りこくって」 コタロウは、咲夜を見た瞬間、二の句が継げなくなった。 彼女は仏のようなスマイルを浮かべたまま、鼻からナイアガラの滝のような血を迸らせていたのだ。 「る…けど…」 「ああ…これは失礼を。私、紅魔館にてメイド長をやっております、十六夜咲夜と申します」 「そ…そうなんだ…」 「どうしました、そんな巫女が弾幕を喰らったような顔で…ああ、この鼻血ですか?いえ…実は私…ふふ、下品な話 なんですが<少女>だけでなく<少年>もイケル口でして…」 コタロウには、何を言っているのか分からない。 ただ一つ、ここにいては危ないと理解(わか)った。 「うふふふふ…お嬢様とこんなに可愛い男の子とのツーショット…うふふふふふふふふふふふふふふふふ…」 「大丈夫です、コタロウ」 安心させるように、レミリアが語りかける。 「こう見えて、咲夜は優秀なメイドですので…何も問題は起こりません。多分」 「多分ってなにー!?」 「うふふふふふふ…狼狽する美少年…素晴らしいわぁぁぁぁぁぁぁっ!」 ―――咲夜の失血量は、既に10000ccを越えていたという…。 と。 コタロウがある意味最大の危機に陥っているとは露知らず、ジロー達は未だ戻らぬ二人を待っていた。 「おっそいなー。レッドの奴もいっちゃったし、もうすぐ二回戦が始まっちまうぞ。二人揃って迷子か?」 「そんな所でしょうね」 魔理沙の言葉に、ジローが同意する。 「全く、あやつときたらあれだけ言ったのに…帰ってきたらラリアット…いや、キ○肉バスターの方が…」 実に物騒な単語を呟くジロー。 普段、彼がコタロウに対してどれだけ良き兄として振る舞っているのか窺えるというものである(皮肉)。 「もう、ジローさんは。そんな怖い顔しなくてもいいでしょうに」 「む…怖い顔などしていません」 「いいえ。具体的に言うなら<アニメ化で喜んだのも束の間、微妙な作画とチグハグに挿入されたせいで解かり辛い 過去話でファンからは酷評され、新規のお客さんも食いついてくれず、DVD売り上げも爆死に終わったラノベ作品 の主人公>といった顔をしていました」 「具体的すぎるわ!」 ジローさんと妖夢さん、相変わらず仲睦まじいコンビであった。 「まあ、それはおいといて将軍さんの方はどうすんだよ?」 「彼は…後で、レッドに<何で見てねーんだよテメー>とか言われて、殴られそうな気もしますね…」 「あちゃー。気の毒に」 その時である。 『―――レディース・アーンド・ジェントルメン!大変長らくお待たせしました!』 実況が響き渡り、騒然とした場内が一瞬、静まり返る。 『戦士達は傷つき倒れ淘汰され、勝者のみが生き残る!問答無用・情け無用・容赦無用・弱肉強食の宴・幻想郷最大 トーナメント―――更なる闘いが待ち受ける二回戦、今こそ開始です!』 二回戦第一試合―――天体戦士サンレッドVS風見幽香。 暴力を旨とする二匹の野獣が今、激突する。
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―――幻想郷最大トーナメント本戦は、遂に明日まで迫っていた。 参加者達が思い思いに時を過ごす中、トーナメントを成功させるべく、裏方の皆さんは今なお闘っていた。 その奮戦ぶりを、どうか見ていただきたい。 「―――あやややや。これはすごいですね、にとりさん」 鴉天狗の新聞記者―――射命丸文は眼前に聳え立つ巨大な建造物に目を瞠り、手にしたカメラのフラッシュを 次々にたいていく。 「ふふん、そうだろうそうだろう。我ら河童の科学力は幻想郷一ィィィィィッ!」 彼女のすぐ後ろでは、大きなザックを背負い、髪を二つにしばってハンチング帽を被った少女が胸を反り返らせて いた。天狗と同じく、妖怪の山に棲息する妖怪の一種―――河童である。 「この<超妖怪弾頭>河城(かわしろ)にとり―――お値段以上の仕事はさせてもらったよ」 幻想郷のあらゆる種族の中で最も科学技術に深い造詣を有する妖怪―――それが河童である。 中でもこの河城にとりは若輩ながら卓越した技術と知識を持つ新進気鋭の河童だった。 彼女の発明品は回転寿司のレーン(後の<かっぱ寿司>であった)からペプシキューカンバー、挙句の果ては 光学迷彩スーツに至るまで多岐に渡る。 その実績を見込まれ、幻想郷最大トーナメント本戦会場の設営を一任されたのだった。 「その結果がこれだよ!」 ―――古代、剣闘士達が命を賭して死闘を繰り広げた円形闘技場(コロッセオ)――― 本戦会場は、正しくその再現だった。 決して派手ではないが、見る物を圧倒する風格を漂わせるその偉容。 一騎当千の猛者達が激突する闘いの舞台として、これ以上ないように思われた。 「どうだい、中々のモンだろう?我ながら自信作さ」 「うんうん、明日にはここで幻想郷中から集まった強者が鎬を削って闘うのですね!うううう~、記者魂が疼いて きましたぁ!最近ちっとも面白いネタがありませんでしたからね。このトーナメントの模様、細大漏らさず記事に させていただきますよ!」 文は瞳に星くん的な炎をメラメラさせつつ、にとりにマイクを突き付ける。 「にとりさん!まずこの会場について質問させていただきますが、よろしいですか!?」 「悪いっつっても無理矢理訊き出すんだろ…いいよ、別に隠す事もないし」 「では、まずお訊きしたいのは安全性です。何しろ、本戦出場者に名を連ねるのははっきり言って怪物としか形容 できない皆様ですからね。闘技場があっさりぶっ壊されるようでは不安でおちおち観戦も出来ませんよ?」 「ふふ、あやや。お前さんはこの河城にとりを侮っているね?」 にやりと笑い、にとりは己の胸を力強く叩く。 「耐久力については無問題(モウマンタイ)!試しにテ○ドンと同等の破壊力を持ったにとり特製ミサイルを十発 ほど撃ち込んでみたけど、小揺るぎもしない程度の強度さ!」 「うわ。明らかに試合が終わる頃にはボロボロになって出場者の強さアピールに使われるフラグですね!」 「うん。正直、私も造ってて思った…」 「あー、まあ、それはともかく、内部はどうなってるんです?」 「今は明日の本番に向けて最後の準備をしてるとこ。見知った連中も何人か顔を出してるから、あややもちょっと 見ていくかい?」 「おお、よろしいので?」 「建前は関係者以外立ち入り禁止なんだけどね…見学したいって奴は通してるよ。まあ、騒ぎを起こさない限りは 黙認って事さね」 「はいはい、心得ていますとも。では、拝見拝見~」 闘技場の入り口を抜けると、広々とした空間に連なる屋台の群れ。 主に飲食物を扱う売店が並んでいるようだった。中には出場選手の絵がプリントされたTシャツを売っている店も ある。見学者を考慮してか既に開いている店もあるが、多くはまだまだ開店準備で大忙しだ。 とある焼鳥屋台では。 「輝夜…開店の準備を手伝ってくれるのは嬉しいんだ。でもな…」 わなわなと震える妹紅。その手には、空っぽの酒瓶。 「ええ~、な~に~もこた~ん」 白皙の美貌を真っ赤にして、既にへべれけになっている輝夜。 「勝手に酒を呑んでもいいとは言ってないぞ!あーあ、一番高いの空けちゃって…」 がっくり肩を落とす妹紅。その首筋に酒臭い息が生暖かく吐きかけられた。 「いいじゃないかもこ~。ぶれいこう、ぶれいこう」 「慧音!お前まで呑んだのか!?」 青にも銀にも見える艶のある髪。胸元を大きく開けた青いワンピースがやや扇情的だ。 輝夜と一緒に手伝いに来てくれていた妹紅の友人・上白沢慧音(かみしらさわ・けいね)である。 普段は知的な教師である彼女だが、今は単なる酔っ払いへと華麗なクラスチェンジを果たしていた。 「固いこというなよ~。ボディはこ~んなにやわらかなくせに~」 「ひいい!よせ、そんなとこを触るなぁ!」 「いいじゃないかぁ、女同士だろぉ?」 「あ、ずるーい。私も私もー。えへへへぇ、もこたんったら芳しいスメル~」 「二人ともやめろぉ!私を百合畑に誘うんじゃない!そんな事しても喜ぶのはあの百合好きの漢だけだぞ!」 ―――その隣にある某クラブの出店では。 「うん、美味い!ロマネだなこりゃ!」 伊吹萃香が盃の中身を飲み干し、ぷはーっと満足げに息をつく。 それを見ながら、手伝いに来ていた少女はその涼しげな表情を変えずに平然と言い放つ。 「いえ、ファンタでございます」 「酒ですらねーのかよ!気付かなかった自分にもビックリだわ!せめてアルコール分を持ってこいよ!」 「失礼ながら萃香様。貴女様は既に酒をリットルにして五、ccにして五千も呑んでおられます。これ以上は健康に よろしくないかと、空気を読んだ次第でございます」 「その結果がファンタかよ…相変わらず空気を読んだ上でそれを無視する女だね、衣玖ちゃん」 彼女はリュウグウノツカイから変異した妖怪・永江衣玖(ながえ・いく)。 <空気を読む程度の能力>の持ち主ではあるが、読めたからといってそれで空気をよくできるかどうかは別問題 という生きた見本であった。 「衣玖ったら…後で私が八つ当たりされるんだからやめてよ」 「何を言います、天子様。だからこそやってるんじゃないですか」 「イジメだ!職場イジメが発覚した!」 「ははは。皆、仲がいいねえ」 酒を呑みつつテンプレートな感想を述べる星熊勇儀。ちなみに彼女が持っているのは杯でも酒瓶でもなく酒樽だ。 それに直接口を付けてラッパ呑みしているのである。だというのに然程酔った様子も見えない所が恐ろしい。 「勇儀さんも呑気な事言ってないで、ちょっとはあの二人を諌めてくださいよ…」 「いいじゃないか、こうしてバカやれるのも、仲良しの証拠さ」 「かもしれませんけど…」 「その後で天子ちゃんが萃香にドツキ回されるのも、仲良しの証拠さ」 「それは全力で否定させていただきます!」 そんな凄惨な有り様を見ていた文は、やれやれとばかりに両手を広げた。 「うーん、既に酔っ払いの巣窟と化してますねえ…」 「明日が思いやられるねえ」 「ま、酔いどれ共はうっちゃっときましょう。ここもしかと見学させてもらって、我が文々。新聞のネタにさせてもらい ましょうか!」 その時である。 「天体戦士サンレッド―――あなたは誠に野蛮で、横行跋扈であるッ!」 屋台の一角から響いた、清らかでありながら内に秘めた激情を感じさせる声。 「この声に、このセリフ…もしや!」 目線を向けた先には、夜雀の妖怪でありミスティア・ローレライの経営する八つ目鰻の屋台――― そのカウンターに座る、一人の女性。 緩くウェーブのかかった亜麻色の長い髪。黒と白を貴重にしたゴスロリ風の装束。 外見のみならず、内面から自然と滲み出すような美を持つ女性だった。 それは、己の信念に全てを捧げる覚悟を持った者だけが手にしうる美―――殉教者の美と言えるかもしれない。 彼女は<ガンガンいく僧侶>聖白蓮(ひじり・びゃくれん)。 新興宗教・命蓮寺(みょうれんじ)の代表者にして神仏も妖怪も人間も全ては平等と謳う、超絶平等主義者。 幻想郷の中では新顔ながら、確かな実力と清廉な人格で一目置かれる存在である。 「…へーへー、分かった分かった。おーこーばっこね、おーこーばっこ…」 その隣でどんより顔をしているのは言うまでもない、サンレッドである。 更にその背後では、予選で彼に敗れた四人組が便乗して大騒ぎしている。 「そーだそーだ!お前はおーこーばっこだぞー!」 「おーこーばっこー!」 「おーこーばっこなのかー!」 「で、おーこーばっこってどういう意味?」 「力に任せて威張り放題のやりたい放題、という意味です。つまり、彼のような人物を指していうのです」 律儀に答える白蓮。淑やかな美貌を凛々しく引き締め、サンレッドに人差し指をビシっと突き付ける。 「聞けば予選で、このか弱くいたいけな子等に容赦なくその拳を振り下ろしたとか―――それだけに留まらず、外 の世界では怪人達にやりたい放題の非道を働いているとも聞きました…天体戦士サンレッド!誠に粗野で、暴虎 馮河(ぼうこひょうが)である!」 なお暴虎馮河とは、血気にはやり無謀な勇を振るうの意である。 そしてサンレッドはそんな彼女の隣で、もはや何度目になるのか分からない溜息をつく。 「…なんで俺は、こんなトコで何処の誰とも分からねー女に説教されてんだろ…ここにゃ大食い亡霊の荷物持ち で来ただけだってのに…」 「南無三!」 「いてっ!ビール瓶で叩くんじゃねーよ!」 「このようないたいけな者達を虐げておきながら、その態度―――誠に不遜で、厚顔無恥であるッ!」 「…………」 「おや、だんまりを決め込むのですか?誠に無気力で、馬耳東風であるッ!」 「分かってんならもういーだろ…」 「まだまだ言いたい事はたくさんあります。何せあなたは誠にチンピラで、何か縛るモノであるッ!」 「四字熟語ですらなくなったじゃねーか!つーか何で皆、さも当然のようにそれを知ってんだよ!?」 ―――説教はまだまだ終わりそうもない。 文とにとりは見なかった事にして、その場を立ち去るのであった。 「…白蓮さんまでいるとは思いませんでした」 「あー。多分、誰かさんへの接待じゃないかね?」 「どういう意味?」 「…大人の事情さ」 ややこしそうな話であった。 ―――客席。 「おおー。随分と広いじゃないですか」 「実に五万人が収容可能だからね…それでも前売りチケットはすぐさま売り切れちゃったよ」 「はぁー。やはり皆、トーナメントに興味津々という事ですね?」 「そうなるね…しかしだ、あやや。お前さんは出場しなくてよかったのかい?<幻想郷最速>の名を欲しいままに するあんたなら、いいとこまでいけると思うんだがね?」 いやいや、と文は笑って首を振った。 「速いだけで勝てるほど、甘いメンツはいませんよ。例えばにとりさん…あれを見てください」 「ん?」 文が指差した先には、二人の少女。 「いよいよ明日ね、幽香。私、ここからたくさん応援するからね!」 究極加虐生物・風見幽香と、その隣には毒人形―――メディスン・メランコリー。 メディスンはそこの売店で買ってきたらしいポップコーンを頬張り、これも売店で購入したと思しき幽香の絵入り Tシャツに身を包んでいた。 「ありがとう、メディ。でも私はか弱い女の子だから。正直、自信ないわねぇ」 その言葉とは裏腹に、その麗しい横顔には萎縮した様子など欠片もない。 あるのはただ、己が力への絶対の自負と矜持――― それを知ってか知らずか、メディスンはぶんぶんと首を振って先の幽香の言葉を否定した。 「そんな事ないよ。幽香はとっても強いもの。きっと優勝できるわ!」 「そう?ふふふ…」 「何せ幽香は幻想郷史上最狂・最凶・最恐の妖怪だもの。見た目はともかく分類としてはもう女じゃないって!」 「ふふ…」 笑顔が引き攣る幽香。それに気付かず、メディスンは命知らずにも続ける。 「何ていうか、幽香がか弱いってんなら他の連中はもうお箸も持てない超箱入りお嬢様よ!」 「ふ…」 「ホントなら私、幽香の事は<アニキ>って呼びたいくらいなんだから!男顔負けっていうか、むしろゴリラとか の域に達してるっていうか…」 「メディ」 「ん?」 幽香の全く笑っていない目を見て、やっとこさ、メディスンは自分が地雷を踏み抜きまくった事に気付く。 「え、えーと…」 必死に言い訳の言葉を探すが、もう遅い。幽香は己の拳を堅く握り締め、高々と掲げていた。 「メディ。私ね、貴女の事はとっても素直で可愛くていい子だと思ってるのよ?本当の妹みたいに想っているわ」 「そ、そう?えへへへへ…」 「でもね…覚えておきなさい」 頭上に振り翳した拳を、一切の躊躇なくメディスンの脳天目掛けて振り下ろす。 メディスンはその場で一回転した後、顔面から地にめり込み、ピクピク痙攣する物体へと姿を変えた。 「口は災いの元―――また一つ賢くなったわね」 その一部始終を見ていた文は、からかうような口調でにとりに問う。 「いくら力があったって、あんなのとガチで闘り合いたいですか?」 「いや…遠慮する」 でしょう、と文は楽しげに笑う。 「それに、まあ…ああいう連中は、傍から見てる方が面白い」 「同意だね」 顔を見合せて笑い合う二人―――そこに。 「お久しぶりですね、河城にとり…それに射命丸文」 「うっ…あ、あんた…じゃない、貴女様は…!」 「ど、どうも…ご無沙汰です…」 文とにとりの表情を一言で表すなら<苦手な先輩とばったり出会っちまった後輩>という感じである。 二人の前にいるのは、厳粛な雰囲気を漂わせる長身の女性。 厳格を絵に描いたような引き締まった顔立ちは、威圧的でこそないものの見る者を否応無しに萎縮させる。 彼女こそは幻想郷における地獄の最高責任者にして、死者達を裁く最大権力者である閻魔が一人――― <楽園の最高裁判長>四季映姫・ヤマザナドゥその人である。 人格者には違いないが、説教好きが高じて大概の人妖から煙たがられている御方であった。 「い、いやあ。四季様まで見学とは意外ですね、はは…」 「や、やはり四季様もトーナメントに御興味が?」 「そういうわけではありません…おや、まだ知りませんでしたか?」 「はあ…何をでしょう?」 映姫はこほん、と咳払いし、やや気取った仕草で胸を張る。 「この度、私こと四季映姫・ヤマザナドゥは、西行寺幽々子及び八雲紫からの正式な依頼により、この幻想郷最大 トーナメントの審判を務める事と相成りました」 「四季様が審判を…?ははあ、それはまた適材適所ですね」 「まあ、手前味噌ながら言わせてもらうと、これほどクセの強い連中の闘いに白黒つけられるのは私くらいのもの でしょうからね…」 「能力からして<白黒はっきりつける程度の能力>ですしね…これは楽しみです、ははは。では私共はこれにて。 さあにとりさん、いきましょ…」 「お待ちなさい、射命丸文」 さっさと回れ右して帰ろうとしていた文は、ぐっと足を止め、嫌々ながら振り向く。 「貴女は相変わらず事件とあればそこかしこ飛び回っているようですが…以前、私が言った事をお忘れですか?」 「え、えっとぉ…」 「射命丸文。かつても言いましたが、あなたは事件を果敢に追い掛け回す事で、新たな事件の火種となってしまい がちです―――そう。貴女は少し、好奇心が旺盛すぎる」 「…………うう~」 反論出来ない―――四季映姫・ヤマザナドゥの言う事は、いつだって正しいのだ。 この場をどうにか切り抜ける方法を、文は必死に考えた。そして――― 「あ、そうだ四季様!実は売店の方に、説教してほしいという男がいまして!」 「ほう?」 ピクリ、と眉を持ち上げる映姫。好機と見た文は畳み掛ける。 「ダメな自分を変えたいと、色々な方々に説教を受けているのです。ここは是非、四季様が有難い説教をかまして 差し上げるべきかと!」 「いいでしょう。迷える子羊に正しい道を説く事も、我が使命」 「さっすがぁ~!あ、その男の名はサンレッドと言いまして、赤いマスクを被ってるからすぐに分かるはずです。 まあかなりのツンデレさんなものですから、説教を嫌がる素振りを見せるかもしれませんが、なに、実の所誘って るんですよ。どうぞ、心行くまで映姫様の徳高きお話を聞かせて差し上げてくださいな!」 「分かりました…彼の荒みきった心は必ずや、この四季映姫・ヤマザナドゥが救ってみせましょう」 胸を聳やかし、我らが映姫様は出撃していく――― なお、彼女のサンレッドに対する説教は実に六時間にも及んだそうな。 聖白蓮と四季映姫・ヤマザナドゥのダブルお説教を食らったサンレッドは、トーナメント前日にして多大なる精神的 ダメージを被ったのだった。合掌。 「―――あらあら。貴女ったら、酷い事するのね」 「おや…?」 いつから見ていたのか。気付けば背後に、魂魄妖夢を従えた西行寺幽々子が立っていた。 右手に開いた扇子を持ち、口元を隠して幽雅に微笑みの花を咲かせる。それだけなら格好もつくのだが、左手には 売店で買ったと思しき大量の飲食物が入った袋をぶら下げている辺りがしまらない。 ちなみに、妖夢の両手も食べ物で塞がっている。勿論全て幽々子の分である。 これだけ喰う亡者は彼女の他にはそうそういまい。 「あんまりウチの居候を苛めないでほしいものね?」 「は、それは失礼をば」 「ま、確かに彼にはヤマナザドゥの有難い説法が必要かもね…あの性格じゃ、高確率で地獄に堕ちそうだし」 「ええ。それも一番きっつい阿鼻地獄に」 「正義のヒーローなのに、えらい言われようですね…」 「ヴァンプさんは確実に極楽浄土へ逝けるでしょうけど」 「ええ。死した後、彼は天の国から世界を見守って下さるでしょう」 「悪の将軍なのに!」 名誉なんだか不名誉なんだか分からない話であった。 「それはともかく―――射命丸文。実は貴女に、いいお話を持ってきたのよ」 「はて?それは一体…」 訝しがる文に向けて、くすりと幽々子は微笑んだ。 「トーナメントで、ちょっと仕事をやってもらいたいの…きっと、貴女もノリノリでやってくれる仕事よ」 現と幻想の狭間より、その全てを見つめながら。 境界の賢者は、一人静かに佇む。 「もうすぐよ―――アリス・イヴ」 旧友の名を呼ぶ。月光の化身のように美しかった、彼女の名を。 「もうすぐ始まるわ…幻想郷最大の、お祭り騒ぎが」 盛大に、賑やかに、破天荒に、そして面白おかしく――― それがきっと、彼女の望んだ事だから。 幻想郷最大トーナメント―――関係者一覧 主催者 八雲紫&西行寺幽々子&賢者イヴ 会場設営担当 河城にとり&河童の皆さん 売店 焼鳥屋台<猛虎譚(もこたん)> 八つ目鰻屋台<みすちー> クラブ・イブキ 他多数 審判 四季映姫・ヤマザナドゥ 出場者 予選を勝ち抜いた総勢32名 「…さてと」 記事を纏め終えた射命丸文は、隠しきれぬ笑みを浮かべて最後にこう書き足した。 「実況アナウンサーは―――コホン。不肖、私こと射命丸文でございます」 ―――そして。 ついにトーナメントは、本戦を迎える――― 最後に立つのは人か、妖怪か、はたまたヒーローか。今はまだ、誰も知らない。
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クロスSS一覧 *****作者 ヒカリさん フルメタル・種なのは クロス元:魔法少女リリカルなのは 機動戦士ガンダムSEED フルメタル・パニック! 00話「ブロローグ」 01話「新たな世界」 幸運と運命 クロス元:機動戦士ガンダムSEED 戦闘妖精・雪風 01-異世界」
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予選から、丸一日が経過した。 重傷を負ったジローではあるが、吸血鬼―――それも齢百年を超える古き牙の再生能力は伊達ではない。 既に、己の足で歩き回れるまでに回復していた。 月灯りが照らす白玉楼の庭園。縁側にそっと腰を下ろし、坐禅を組む。 涼やかな風が頬を優しく撫でる、いい夜だった。 月の光は、彼の身体を優しく包んでくれる。 その祝福の中、しばしジローは思索に耽った。 「ジローさん」 「ん…?」 呼びかけられ、思索を中断する。そこには、半人半霊の少女が立っていた。 「御身体の方、もう大丈夫なんですか?」 「ええ。心配をおかけしました」 「か、勘違いしないでよねっ!べっ、別にあんたの心配なんてしてないんだからねっ!」 「…妖夢さん。属性は無闇にたくさん付ければいいものではありませんよ」 「そりゃそうです。眼鏡っ子でお嬢様で優等生で知恵袋で天然で健気でスタイル抜群でドジっ子と、ハイブリッド で完全無欠の萌えキャラになるはずだった幸運☆の某ピンクさんなんて、人気的な意味で悲惨でしたもんね」 「どうしてそう無駄に敵を増やす発言を…」 「ま、某みゆきさんの話なんてよして、本題に入ります。これをどうぞ」 「む…」 妖夢が差し出したのは、一振りの刀―――望月ジローの愛刀にして、彼の二つ名の由来でもある<銀刀>。 受け取ったジローは、それを鞘から抜き出す。 銀のコーティングを施された傷一つない刀身が、月の光に煌めいた。 「しかしこれは、レッドとの闘いで折れたはず…何故?」 「幻想郷には様々な異能を持った連中が百花繚乱ですから―――<壊れた物を直す程度の能力>の持ち主くらい、 探せばいるものです」 値は少々張りましたが、と妖夢は親指と人差し指で円を作ってみせた。 「それはかたじけない。ただ、その…情けない話ですが、私は手持ちが…」 「んなもん、ミミコさんに養われてるヒモ吸血鬼のあなたに期待しちゃいませんよ」 「むっ…!」 容赦ない言い草に、日頃は温厚なジローも流石に腹に据えかねた。 ここは一つ、ガツンとかまさねば漢(おとこ)ではない! 「何たる無礼か、魂魄妖夢!誇り高き<賢者>の血統に連なるこの望月ジローを愚弄するとは、言語道断っ!ええ、 認めましょう。確かに私は弟共々ミミコさんに生活基盤の全てを委ねている―――しかし!それはお互いの信頼と 同意の上に成り立つ尊き関係なのです!それを<ヒモ>などと侮蔑的な一言で表すとは、笑止千万っ!そもそも が私はミミコさんの護衛役として日々を誠実に勤勉に送っているのです!いやまあ確かに遅刻率ほぼ100%ですし、 そのせいでミミコさんは下手すれば死んでた事もありますし、とある水曜日には機関銃をぶっぱなして建物を倒壊 させ、危うくミミコさんを巻き添えにしかけた事とかもありますが―――それでも私は断じて<何か縛るモノ>など ではないのですっ!半人半霊の剣士・魂魄妖夢っ!先刻の貴女の悪意と偏見に満ち満ちた発言に対して、私は 正式に謝罪と賠償を要求させて頂くっ!」 と、颯爽と立ち上がり妖夢に向けて毅然と言い放つ―――事が出来たらいいなあ、と空想してみた。 もちろん空想してみるだけであり、実際は何も言えずに口をへの字にしただけである。 <空しい想像>と書いて空想。 「ともかく、お金に関してはジローさんに請求するつもりはありませんよ」 「はあ。しかし、それでは…」 「この刀の修理を依頼してきた男とその友人達が、支払ってくれています」 「え?」 「ただ、彼等も懐具合が芳しくなかったので…労働という形で返す事と相成りました」 「それは一体、どういう…」 「まあ、別に難しい話じゃありません。要するに―――」 「あー、チクショウ!何だってこんな無駄にデケーんだよ、この家は!」 ―――サンレッドは手にした雑巾を放り投げて、大の字になった。 「朝から三人がかりで掃除してんのに、全然終わんねーぞ!?どーせここにゃ大食い亡霊と毒吐き従者の二人 しか住んでねーんだから、もっと慎ましやかな家に引っ越せよ!」 「あらあら、サンレッドったら」 くすくすと、様子を見守っていた幽々子が笑う。 「あなたが自分で言ったことでしょ?<銀刀を直すのにかかった金の分、働いて返す>って。だからこの白玉楼 の大掃除を頼んだんじゃない」 「そりゃそーだけど…ここまで広いとは思わなかったんだよ、くそっ」 「まあまあ、レッドさん。これもジローさんのためですよ」 ハタキを持ったヴァンプ様が、レッドさんを宥める。 「うるせーよ、ヴァンプ。つーかお前、何を当然のように正義の味方の手伝いやってんだ。悪の将軍のくせに」 「いや、それはほら。レッドさんとジローさんは<正義の味方>である前に、ご近所さんですから。ははは」 「そう!友情には正義も悪もないんだよ、レッドさん」 箒を握り締めたコタロウが、力強い笑顔で語る。 彼もまた敬愛する兄のため、過酷な労働に精を出しているのである。 「ったく…この脳味噌お花畑コンビが」 起き上がり、雑巾を拾って掃除を再開するレッドさん。 はあ~、と溜息をつきながら呟きを洩らす。 「俺、こんな他人のために身を粉にするお人好しなキャラだったっけ…」 「―――確かに、あなたのキャラではありませんね」 そう言ったのは、黒い髪と瞳を持つ、赤いスーツの吸血鬼―――望月ジロー。 いつの間に現れたのか、彼はモップを手にしてそこにいた。 「ジローさん!」 「兄者!もう起きて大丈夫なの?」 「ええ。もうすっかり良くなりました」 駆け寄る悪の将軍と弟に、ジローは笑顔を返した。 「だから、私も手伝いが出来ればと思いまして、ね」 「そんな…ダメですよ、まだ安静にしてなきゃ!」 「いいんです。我が愛刀の修理代くらい、自分で捻出しますよ」 構いませんよね、と、ジローはレッドとコタロウに目を向けた。 「まっ、本人がやるっていうんなら手伝ってもらおーや」 「そうだね。でも、無理はしちゃダメだよ、兄者」 「何を言います、コタロウ。お前は兄を甘く見ていますね?このくらいが無理なら、私はとっくの昔に灰になって いますよ」 「それもそっか…じゃ、兄者も一緒に大掃除~♪」 バスバス箒を振り回すコタロウである。余計な埃を撒き散らしているも同然であった。 ジローはふっと笑い、最愛の弟の脳天にエルボーをムエタイ式に鋭角で決めた。 コタロウは浜に打ち揚げられたカニのように泡を吹いて失神・昏倒する。 床にだくだくと赤色が嫌な感じに広がった。 それを見下ろし、ジローは真面目くさった顔つきで言い放つ。 「コタロウ。掃除は真剣に、そして丁寧にやりなさい」 「あのー、ジローさん…スパルタ教育にも程があるのでは…」 「ヴァンプ将軍。昔の人はこう言いました…痛くなければ覚えませぬ、と」 「…お前は大丈夫なのかよ、ジロー。掃除が得意そうには見えねーぞ」 「心配なさらず」 にやりとほくそ笑むジローさん。 「これでもミミコさんから給料を頂く前日には、自主的に家の掃除をしているのですよ?」 「そ…そうか…」 俺もかよ子の給料日には掃除してる、とは言えないレッドさん。 そんな二人を見ながら、ヴァンプ様はこっそり呟くのであった。 「この二人が妙に仲良しなのは、ヒモ共鳴してるからなのかも…」 「おい。何か言ったか、ヴァンプ。正義を行使しなきゃならねー気がすんだけどよ?」 「直ったばかりの銀刀の試し斬りをしなければならない気もしますが?」 ※レッドイヤーと吸血鬼は地獄耳です。 「いえ、何も。あは、あはは…」 日本人的な笑顔を浮かべるヴァンプ様。ちょっぴり殺気を発しながら詰め寄るレッドとジロー。 そして、未だに泡を吹き続けるコタロウ。 彼等を微笑ましく見つめながら、幽々子はそっとその場を後にするのだった。 「おや幽々子様。そんなゴキゲンな様子でどうしました?」 主の姿を見つけた妖夢は、開口一番にそう言った。 「あら、分かるかしら?ふふ」 「分かるわよ、そりゃ。にやけた顔しちゃって」 虚空にぽっかり開いた<スキマ>―――そこからぬうっと、八雲紫が顔を出した。 「…もっと普通に現れて頂く訳にはいきませんか、紫様。貴女様の登場の仕方は非常に心臓に悪いのですが」 「スキマ妖怪としてのレゾンデートルよ、これは」 「は、それは失礼をば」 反論はしない。この大妖怪に、自分如きが何を言おうがどうにもならない事など、妖夢とて弁えている。 「で、幽々子様は何故にそんな今にもマッパでリンボーダンスしそうな程に浮かれているのです?」 「長い亡霊生活の中でも未だかつてそこまで浮かれた事はないわよ…それはともかく、コタロウがね」 ふふ、と幽々子は優しげに微笑む。 それはただ純粋に、友の幸せを祝福するための笑顔だった。 「あの子は家族や友達に恵まれてるな、と思って」 「恵まれてる…そうですか?周りにいるのは甲斐性のない兄に、ヒモでチンピラのヒーロー、うだつの上がらない 悪の将軍ですよ?ミミコさんという方はどうだか知りませんが、恐らく一見まともそうでいて問題大ありの女性で ある可能性大です。むしろ残念な人間関係しか築けていない気もしますが…」 「貴女も意外に見る目がないわね」 クスクスと、紫は笑う。 「あんな混沌として面白い連中が周りにいてくれるなんて、最高じゃない―――ねえ、幽々子」 「ええ。きっと退屈とは無縁の毎日を送ってる事でしょうね。羨ましいくらいだわ」 「楽しければそれでよし…そういう事ですか?」 「そうよ」 「その通り」 境界を司る遊惰なる大賢者と、死を司る幽雅なる亡霊姫は、あっけらかんと答えた。 「楽しくおかしく面白く―――それこそ生きる醍醐味でしょう?」 「ま、私はもう死んでるけれどね」 「…貴女方は偉大な御方です。それは心の底から認めています。けど、その思考はよく分かりません」 妖夢は無駄と知りつつ、言い募る。 「楽しいだけじゃあ、やってけないでしょう」 「そう―――楽しいだけじゃ、やっていけないの」 「特に、コタロウは―――<賢者イヴ>の血統は、ね…」 返って来たその言葉は、妖夢にとって意外なものだった。 「あの子の未来に待ち受ける宿命は…とても重い」 「…………」 「だからこそ、ああいう友達は貴重なのよ」 幽々子は笑みを消して、遥か未来に想いを馳せるように月を仰ぐ。 「コタロウに何があろうとも…きっと、サンレッドやヴァンプさん、それにミミコさんとやらは、変わらずあの子の傍 にいてくれるでしょう。あの子の友達であり続けてくれるでしょう―――」 「そんな得難い仲間達を、コタロウは手にしている…それはそれは、有難い話だわ」 紫は目を閉じ、黙祷するように両手を合わせる。 妖夢はまだ納得できない、とばかりに仏頂面をしていたが、やがて。 「まあ、確かに」 渋々という様子ではあったが、こう言ったのだった。 「ヒモだったり悪の将軍だったり、その割にお人好しで―――面白い連中には、違いありませんね」 「でしょう」 紫は楽しげに答える。 「特にサンレッドには期待しているわ。どれだけカオスな事をやってくれるのか―――本当に、楽しみ」 「結局、御自分の享楽優先じゃないですか…」 やれやれだぜ、と言わんばかりに妖夢は深く溜息をつくのだった。 <境界の妖怪>八雲紫。 サンレッドと彼女の対決は、正しく頂上決戦―――トーナメント決勝戦にて実現する事となる。
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唯「ずっと一緒」 唯「憂・・・心配しないでね」※唯「ずっと一緒」の3年後の話。 澪「唯の5周忌か・・・」 唯「あれ?私は・・・」 唯「ある休みの日」 唯憂「この夏の思い出」 律「お前を放っておけないんだよ」唯「・・・」 梓「唯先輩の消失」※ハルヒの消失の世界観を元に作りました。 唯「一人忘れてるような・・・」 唯「突撃!となりのあずにゃん」 唯「見せたかった景色」 唯「HTTの危機」 唯「ささいなことで」 律「ささいなことで」 ※ここにあるSSの感想は下のコメント欄にてお願いします。 素晴らしい限りです! まだ二作しか読んでませんがどちらも素敵なSSでした! -- マリオさま (2013-01-11 12 53 04) 名前 コメント
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巨大な湖の畔に、その館は聳え立っていた。 屋根も外壁も真っ赤に塗りたくられた、悪魔の館―――人はそれを<紅魔館>と呼び、畏れた。 その一室では、悪魔達による饗宴(サバト)が繰り広げられていた――― 「セイヤァッ!」 中国風の衣装を纏い、長い赤髪を振り乱し拳を振るう女性。 まるで舞い踊るように美しい体捌きだ。 更に体内で練り上げた<気>をその拳に込め、可憐な両腕を鉄槌と化す。 「―――烈虹真拳!」 彼女は紅魔館の門番にして拳法の達人<華人小娘>紅美鈴(ホン・メイリン)。 人の身では決して到達できない境地に至ったその絶技を指先一つで受け止めたのは、大吸血鬼レミリア。 「くっ…」 「まだまだね。こんなんじゃ準備運動にもならないわ」 「も…申し訳ありません」 「なら、これはどうかしら?」 背後からの声。 「火符―――アグニシャイン!」 襲い掛かる無数の火球。 「続けて木符―――シルフィホルン!」 そして鋼すら切り裂く鎌鼬が群れを成して迫り来る。 それを放ったのは、ゆったりしたローブに身を包んだ病弱そうな少女。紅魔館の地下に存在する大図書館の管理人 にして、レミリアの数少ない友人でもある<動かない大図書館>パチュリー・ノーレッジ。 レミリアは軽く腕を振るい、魔力の風を起こす。たったそれだけの動作で、彼女は大魔術を相殺した。 「ふん、相変わらずビタミンAが足りてないわね」 「あらま…私としては、本気で殺すつもりだったんだけどね」 「甘いわよ、パチェ。灰も残さないつもりで来なさい」 「では、お言葉に甘えて―――咲夜の世界」 ―――ありのまま起こった事を記そう。 気が付けばレミリアの周囲を、優に百を超える銀のナイフが取り囲んでいた。 それは催眠術や超スピードなどというチャチなものでは断じてない。 ナイフを放った張本人である<完全で瀟洒な従者>十六夜咲夜(いざよい・さくや)の恐るべき能力の片鱗だ。 「―――殺人ドール!」 そして全てのナイフが一斉にレミリア目掛けて飛びかかり―――瞬きの間に全て叩き落とされた。 「いいタイミングだったけど、残念ね。そんなナイフじゃ林檎にも刺さらないわよ」 「ふふ…カリスマ溢れるお嬢様も…凛々しいですわぁ~~~~~っ!」 ブブーっと鼻血を噴き出す咲夜さん。結局お嬢様であれば何でもいいらしい。 「でも、お嬢様は急にどうなされたんでしょう?修行なんてらしくもない」 「例のトーナメントがあるからでしょ」 美鈴の疑問に、パチュリーが答えた。 「それでもレミィのガラじゃないとは思うけどね」 「何とでも言いなさい。私はどうしても欲しいのよ、あの方の…賢者イヴの秘宝が」 「へー。でも、それだけじゃなさそうね。誰か、ブチのめしてやりたい相手がいるんじゃなくて?」 「…フン。分かったような口を利かないで」 鼻を鳴らしつつ、レミリアは親指を噛む。 思い出されるのは、屈辱の記憶だ。 「今のままじゃ、サンレッドには勝てないわ…」 あの夜の闘いは、お互いに全力ではなかった。 とはいえ、どちらがより余裕を残していたかといえば、サンレッドの方だろう。 まだ奴は、真の力を見せてはいない。その確信があった。 「外の世界のヒーロー…そんなに強かったのですか?」 「…かなりね。それだけは認めざるをえない。だからこうして、鍛え直してるのよ」 「お嬢様にそこまで言わせるとは…武に生きる者として、是非とも手合わせを望みたいものです」 「やめときなさい、美鈴。貴女じゃ一撃でやられるのがオチよ」 「酷っ!せっかく武人キャラらしく振る舞ったのに!」 「やかましいわ、居眠り門番」 抗議の声を無視して、舌打ちする。 「とはいえ…三人がかりでもこれじゃ、身体も温まらないわね」 「じゃあ、あたしが相手したげよっか?お・ね・え・さ・ま♪」 部屋の壁が、砕け散った。 予備動作もクソもない、それは完全なまでの破壊にして、破滅だった。 究極の破壊を体現してみせたのは、砕けた壁から悠然と部屋に侵入(はい)ってきた幼い少女――― 年の頃はレミリアとそう変わりなく見える。 ブロンドの髪を靡かせたその姿は、よく出来た人形のようだ。 背中にはまるで枯れ木の枝を思わせる不気味な翼。 <悪魔の妹>フランドール・スカーレット。 レミリアの実妹であり、彼女と同等の実力を持つ強大な吸血鬼である。 「い…妹様…!」 咲夜が顔を引き攣らせ、後ずさる。美鈴とパチュリーも同様だ。 「あらぁ?そんなに怖がらなくてもいいじゃない。あたしだって紅魔館のお嬢様なのにぃ。プンプン」 両手の人差し指を立てて、頭にツノを作ってみせる。 可愛らしい仕草だが、咲夜達にとっては猛獣が牙を剥いたようにしか見えない。 レミリアも恐るべき吸血鬼だが、少なくとも力と凶暴性を自制する術は知っている。 知っているというだけだが、ともかく知っている。 だがフランドールは、それを知ろうとすらしない。 何一つ分からぬまま、無邪気な幼子の心のまま、絶大な力を何の遠慮も忌憚もなく振るうのだ。 姉であるレミリアですらそんな妹を持て余し、館の一室に幽閉せざるをえなかった。 そんな事をしても無駄だと知りながら。 フランドールがその気なら、今こうしているように、平然と出てこれるのだから――― だが。 今のレミリアにとっては、彼女が出てきてくれたのは好都合だった。 「いいでしょう、フラン」 レミリア・スカーレットが変質する。 これまではどれだけ派手に闘おうとも、幼い少女としての一面は常にあった。 だが今の彼女を見て、そんな印象を抱く者など皆無だろう。 そこにいるのは傲慢にして偉大な月下の女帝―――レミリア・スカーレット! 「久しぶりに、姉妹水入らずで遊びましょうか」 「うふふ、嬉しいなぁ。楽しいなぁ。お姉様と殺し合いごっこだぁ!」 ―――二対の悪魔の死闘は、一昼夜に及び続いた。 その光景を見ていた紅魔館の面子は揃って口を閉ざし、ただ恐怖だけを顔面に張り付けていたという。 <永遠に紅い幼き月>レミリア・スカーレット。 彼女は幻想郷最大トーナメント準決勝において再びサンレッドと相対し、雌雄を決する事となる。 所変わって、白玉楼。 ―――今にも雨が降りそうな曇天だった。 暗い空の下、白玉楼の庭園で二人の剣士が睨み合う。 <半人半霊>魂魄妖夢。 <銀刀>望月ジロー。 妖夢が手にするのは<楼観剣>と銘打たれた長刀。 妖怪の刀匠によりて鍛え上げられた妖刀。 ジローが手にするのは刀身に銀がコーティングされた無骨な日本刀。 数多の同族の血を吸い、彼の二つ名の由来となった銀刀。 二人は既に半刻に渡って、僅かな身じろぎすらせずに向い合っていた。 互いに正眼に構えた剣もまた、時が止まったように動かない。 はらり、と彼等の間に木の葉が落ちる――― 「参るっ!」 それを合図として、先に動いたのは妖夢だった。一歩で間合いを詰め、一呼吸で九の斬撃を繰り出す。 だがそこに、ジローの姿は既にない。彼は高く跳躍して妖夢の剣をかわし、頭上から銀刀を振り下ろす。 妖夢もそれを読んでいた。素早いバックステップで距離を取り、ジローの剣が空を斬る。 両者が態勢を整えたのは完全に同時。 横薙ぎの一撃を繰り出したのも同時。 キィン―――澄んだ音を響かせて、互いの得物が弾かれて宙を舞い、地に突き立った。 「…ふう。中々どうして、相当の使い手じゃないですか」 楼観剣を地から引き抜き、鞘に収めて、一気に噴き出した汗を拭いながら妖夢はジローを称える。 「おかげでいい鍛錬になりました。ありがとうございます」 「こちらこそ」 ジローも帽子を取り、頭を下げた。 「よき剣士に出会えました。剣に生きる者の端くれとして、喜ばしい限りです」 「もう。そんなにおだててもパンツはあげませんからね!」 「いらん!」 「またまた。<パンツ>と聞いた瞬間、その無愛想な顔がちょっと綻んだのを確かに見ましたよ」 「バ…バカな!私はそのようなハレンチな男では…!」 「ああ、ごめんなさい幽々子様。妖夢はこのゲス男によって汚されてしまいました…」 「違ぁぁぁぁぁうっ!それでも私はやってないっ!」 「ま、冗談はともかく」 妖夢は背筋を伸ばし、ジローを見つめる。 「あなた、本当にトーナメントに出場するつもりですか?」 「…言いたい事は分かります。とても優勝できる腕ではないと言いたいのでしょう?」 「はい。ぶっちゃけるとそうです」 竹を割ったような率直な言葉だ。ジローは思わず苦笑してしまう。 「私と互角の腕を持つからには、実力的には幻想郷でも上中下のうち、上には分類されるでしょう―――けれども 上の上に位置する連中。例えば八雲紫様―――例えばレミリア・スカーレット。そういう相手と闘ったら、間違いなく あなたは負けます」 「でしょうね。そのくらいは分かります」 自嘲するでもなく、軽く答えるジロー。妖夢はそれに構わず続ける。 「無様な敗北。それだけならまだいい。命があればやり直せる―――所詮はお祭り騒ぎのようなものですからね。 命まで奪い合うような闘いにはならないでしょう。死ぬ前に降参すればいいだけです」 けれど。妖夢は続ける。 「あなたの気の入れようから見ると、負けを認めるようには思えません。殺されると分かった上で、それでも突き 進んでしまうんじゃなかろうかと」 「おや、心配してくれてるんですか?可愛い女の子の胸を痛めさせてしまうとは、我ながら罪深い」 「あなたの心配なんかしちゃいません。勝手にやってればいいでしょう」 皮肉な物言いのジローに対し、妖夢はいつになく真摯に語る。 「私が心配してるのは、あなたが死んだら悲しむ人がいるんじゃないか、という事です」 「…………!」 脳裏に浮かぶのは、弟の―――コタロウの笑顔。 その隣には、アヒル口の少女。 親しい何人かの友人。その中にはサンレッドやヴァンプ将軍の姿もあった。 「<賢者イヴ>というのがあなたにとってどれだけ大切な存在かは想像に難くありません。その遺産とやらに執着 するのも、仕方ないとは思います―――でも、死んだら何にもならないでしょう」 「…死ぬ気なんてありませんよ」 ジローは皮肉っぽく、笑って答えた。 「私にはまだ<使命>が残っていますから。それを果たすまでは、死んではならないんです」 「ふーん…何か、それを果たした瞬間に死んじゃいそうですね」 「そうですね…否定はしません」 「してくださいよ。そんな言い方だと不安になるじゃないですか」 「お?やはり心配してくれているのですね。おお、ありがたやありがたや」 「ケッ!調子乗ってんじゃねーですよ、百年しか生きてねーガキが!」 「…………参考までに、妖夢さんはどのくらいの歳なのですか?」 「えっと…多分あなたの三倍くらいは生きてますかね」 大先輩だった。 「申し訳ありません。お年寄りの方に大変失礼をしました。バスではシルバーシートを譲りましょう」 「あらまあ、いいんですよ。それより私の年金のために馬車馬のように働いてくださいね、ガキンチョ」 「いやあ、実を言うと私は国に金なんて納めてないんですよ、吸血鬼ですから」 「おっと、これは失礼。あなたは女性の世話になってるから、確定申告の必要がないんですね?<何か縛るモノ> なんですね?」 「ははは。これは手厳しい。あんまり嫌味ばかりだと、口元の小皺が増えますよ?」 「うふふ。そんな事を言ってると、寝てる間に心臓に杭が刺さってても知りませんよ?」 仲がいいんだか悪いんだかよく分からん不毛な会話は、その後一時間近くも続いたという。 ―――その頃、厨房にて。ヴァンプ様は夕飯の支度を始めていた。 「さて、ジローさんは妖夢ちゃんの相手をしてるし、レッドさんとコタロウくんも幽々子さんに頼まれて買い物に行ってる 事だし、私も働かないとね!」 割烹着を見事に着こなし、気合十分である。包丁を握り締め、まな板に野菜を並べる。 「クックック…では、始めるとするか」 ヴァンプ様の目付きが変わった。お人好しの悪の将軍から、闘う漢(おとこ)の燃える瞳へ。 眠れる獅子が今、目覚めた。 そう、厨房は彼にとって戦場なのだ! その華麗にして優美なる包丁捌きは、ジローと妖夢の剣技にも劣らぬ芸術であったという――― ―――さて、我等がヒーロー・天体戦士サンレッドとその一番弟子(自称)望月コタロウは買い物である。 人間の里。 機械文明の欠片も感じない、昔ながらの不便でありつつ活気に満ちた生活が営まれている事は、道行く人々の表情 から窺い知れた。 そんな中で真っ赤なマスクのヒーローと、天使のような金髪美少年の取り合わせは異様過ぎる。 思いっきり注目を浴びていたが、二人は特に気にしていないようだった。 「ヒーローが異世界に来て、やる事はおつかいって…間違ってるだろ、色々」 レッドさん、マナー違反の歩きタバコしながらいきなり愚痴である。 「しかも、行き先を訊いたら<香霖堂って店なんだけど、行けば分かるわよ。明らかにおかしな店だから>ときたもん だ。いい加減すぎんだろ」 「もう、そんなに暗くなっちゃダメだよ。ほら、見てごらん。空はこんなにいい天気!」 コタロウがビシっと指し示した空は先も言った通り、今にも泣き出しそうな曇天である。 「…じゃ、ないね。レッドさん、この世界を明るく照らしてよ。太陽の戦士でしょ?」 「そういう方面の能力じゃねーんだよ、俺は…世界を照らせとか言ってんじゃねー、吸血鬼なのに」 そう言って、レッドはコタロウの姿を見つめる。 ふわふわの金髪に、海のような青蒼の瞳。 太陽なんてへっちゃら。ニンニクたっぷりのラーメンも大好き。 クリスマスには聖歌も唄う。 「今更だけどお前、ホントにジローとは全然違うのな…」 「そうなんだよねー。兄弟なのに、不思議でしょ?でも、これはね」 「…兄弟だからだろ」 笑顔で何かを言おうとするコタロウに先んじて、レッドは言った。 「ジローは強えけど、太陽だのニンニクだの聖歌だの弱点だらけだ。お前は弱っちいけど、ジローの苦手なモンは 全部へっちゃらだろ?だからよ…」 レッドはタバコの煙を吐き出し、コタロウを見つめた。 「お互いにダメな所を助け合えるようにって…そういう風になったんじゃねえのか?俺はそう思うけどな」 そう答えた。けれどこの兄弟について、結局の所レッドは殆ど分かっていない。 もしかしたら、もっと別の理由――― 目を覆いたくなるほど残酷で悲しく、それでいて涙せずにいられない崇高で優しい秘密があるのかもしれない。 そんな風に思えてならなかった。 「そう。それなんだよ、レッドさん!」 けれどコタロウは、いつになくおセンチなレッドに向けて、いつもの明るい笑顔を向ける。 「兄者もそう言ってたんだよ。二人が助け合えるようにって、ぼくらのお母さんが知恵を絞って考えてくれたんだよ って。だからね」 「ぼくも大きくなったらレッドさんぐらい強くなって、兄者を助けてあげるんだ!」 「そっか」 レッドは素気なく答えて、コタロウの頭をポンと叩いた。 「ジローが言うんなら、そうなんだろな」 「うん!」 「けど、俺ぐらいに強くなるってのは無理だろ。お前、ヘッポコだしよ」 「ええ~~~…そんな事ないよ!誰もが最初は弱いけど、頑張って強くなるんだからね!」 「いーや、お前の弱さは努力で補える範囲を越えてる。どれだけ頑張っても人間じゃハンマ星人にゃ勝てねーのと 同じだっての」 「ひっどーい!レッドさんのバカー!」 「かかか、空き地の野良犬(生後数ヶ月)を倒せるようになってから言いやがれ」 プリプリ怒るコタロウを軽くあしらいつつ、レッドはコタロウと歩幅を合わせて道を往く。 やがて人間の里は遠ざかり、深い森が見えてきた。その入口に建つ一軒屋に、二人は目を奪われた。 「…あれか」 <香霖堂(こうりんどう)>という看板を掲げたその店は、異様の一言だった。 玄関の脇に雑然と並ぶタヌキの置物だのサッカーボールだのバス亭の看板だの、統一性がないにも程がある。 「うっわー、楽しそうな店だね!」 「そうか?ゴチャゴチャしててうっとーしーとは思うけどよ」 「レッドさんったら、そんな事ばっか言って。さあ、レッツ&ゴー!」 「爆走すんじゃねーよ…あ、コケた」 「おや、見ない顔だね?はじめまして。僕は店主の森近霖之助(もりちか・りんのすけ)だ」 店に入るなり出迎えたのは、昔風の衣装を着込んで眼鏡をかけた若い男。 見かけは何処にでもいそうな優男だが、どことなく曲者の風格も漂わせている。 (あんま気が合いそうにはねーなー) そんな失礼な事を考えながら、レッドは幽々子から渡されたメモを霖之助に差し出す。 「これを見せれば分かるって言われたんだけどよ」 「ふむ…ああ、君は西行寺家の使いなのか。とすると、もしや噂の外の世界から来たヒーローかい?」 「あん?何でんな事を知ってんだ」 「これさ」 言うまでもなく文々。新聞である。まだそれに目を通した事のなかったレッドとコタロウは、その内容に驚く。 「こんなんが発行されてたのか…俺達の事までバッチリ書いてるし」 「何処で調べたんだろね」 「清く正しく、射命丸文。神出鬼没の彼女にかかれば、記事にできない事件はないよ…さて、それでは少し待って いてくれ。注文の品を用意するから」 霖之助が店内をガサゴソと探り始める。それを待っている間、レッドはぐるりと店内を見回してみた。 「ふーん…色んなモンがあんだな」 「幻想郷には、様々な世界から色々な物が紛れ込んでくるんだ。僕はそれを拾って、売り物にしている」 「はあー。随分と楽な商売だな」 「ははは。魔理沙の奴にもよく言われるよ」 「でも、何の道具なのかとか全然分からないんじゃない?」 コタロウの疑問に対し、霖之助は「そうでもないよ」と答えた。 「僕にはちょっとした能力があってね…初めて見た道具でも、その名前と用途がすぐに分かるのさ」 「へえー。すごいじゃん!」 「ふふ。そうは言っても、実はそんなにすごくないんだけどね」 例えば、と霖之助は扇風機を示した。 「これは扇風機といって、風を送って涼しくなるための道具だ…ここまでは分かる」 「うん」 「でも何が動力なのか、どうすれば動いてくれるのか…それは分からない。色々試してみるしかないんだ」 「うーん、それは結構不便かも」 「だね。けれど、使い方が分かればしめたものさ。外界の技術の恩恵にあやかることができるからね」 くすり、と霖之助は笑ってみせた。 「実を言うと気に入ったモノは売らずに、自分の持ち物にしている」 「せこくねーか、それ」 「そう言ってくれるなよ。役得さ、これも―――そうそう、最近じゃこんなのも見つけたよ」 霖之助が懐から取り出したのは、くの字型の奇妙な物体―――そう、銃だった。 普通の銃と違いカラフルな色合いで、まるでヒーローが使う兵器のようだ。 「これはね、サン―――」 「サンシュートじゃねーか!」 レッドは霖之助を遮り、その手からサンシュートをひったくる。 「ウチの工具箱にでも入ってるもんだと思ってたのに…」 「はあ…君の持ち物だったのか。気付かない内に幻想入りしてしまったんだね」 世間は狭いもんだ、と霖之助は呟く。 「兵器として使うつもりはないけど、デザインが気に入ったから手元に置いておきたかったんだけどね…所有者が 現れたのなら仕方がない。必要な物なら、返すよ」 「あ?いや、まあ、俺のだけど、別にそこまで必要ってわけじゃ…」 だが、サンシュートは(一応)己の頼れる相棒だ(多分)。 返してくれると言ってるんだから、お言葉に甘えるべきかもしれない。 「…じゃあ、悪いけど持ってくぞ」 「悪い事はないさ。道具が本来あるべき場所に戻っただけだからね…さて」 どうやら注文の品も包み終わったらしい。霖之助は大きな袋をレッドに手渡し、人好きのする笑みを見せた。 「どうかまた、御贔屓に」 紆余曲折を経て、サンレッドの手に戻ったサンシュート。 果たしてその実力が発揮される日は訪れるのだろうか。 それは誰にも分からない――― おまけ 「ゆゆちゃーん。おつかい、終わったよー」 コタロウは、香霖堂で包んでもらった袋を幽々子に渡した。 「ご苦労様。ふんふふふふふーんふふふっふーん♪…ああっ!」 幽々子は、恐るべき過ちに気付き、彼女には珍しく声を荒げた。 「コ…コタロウ!おつりで勝手に金平糖なんて買っちゃダメじゃない!」 「ごめん…どうしても食べたかったから、つい…」 「まあまあ、そう怒ってやるなよ」 「もう…ああっ!」 幽々子は再び声を荒げた。 「サ…サンレッド!勝手にタバコを買っちゃダメじゃない!しかも1カートン!」 「わ…悪い…切れてたもんだから、つい…」
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2chエロパロ板のスレッド、『ゴーストハント/悪霊シリーズでハァハァ』で発表されたSSをまとめたページです。 注意!! 原作のイメージを壊す可能性があります。 内容上、21歳未満の方は閲覧禁止です 猟奇的な表現、また本作のネタばれが含まれている場合もありますので、閲覧は自己責任でお願いします。 Menu 作品集 リンク 現行2chエロパロスレッド ゴーストハント/悪霊シリーズでハァハァ http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161308766/ ゴーストハント/悪霊シリーズでハァハァ その2 http //sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1180189151/ 今日 - 人 昨日 - 人 total - 人
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不気味に鬱蒼と生い茂る木々。 深く闇に沈む森。 日が落ちた世界を、天体戦士サンレッド率いる一向は紅魔館へ向けて進む。 しかして何とも、夜の世界というのはおどろおどろしい雰囲気だ。 おまけにここは幻想郷。夜は、妖怪達の時間。いつ彼等が牙を剥いて襲ってくるか分かったものではない。 ―――しかしながら、ここにいる面子を見て、それでもなお襲い掛かってくる妖怪がいたとしたら、そいつは勇気 があるのではなくただの自殺志願だろう。 白玉楼の主―――西行寺幽々子。 その護衛役の半人半霊の剣士―――魂魄妖夢。 百年を生きる吸血鬼―――望月ジロー。 そして幻想郷最強クラスの妖怪達とも互角に渡り合う最強のチンピラ―――サンレッド。 向かってくる低級妖怪などがいれば、数秒で消し炭にもミンチ肉にもできるような連中であった。 「あわわ…レッドさ~ん」 「ひええ…兄者~」 そんな中、戦闘力的にはみそっかすなヴァンプ様とコタロウは震えながら、それぞれにレッドさんとジローさんの 服の裾を掴むというヒロイン行動に出た。 こいつらは多分、妖怪に襲われたら普通に喰われる。 「どうしましょう、私、とっても怖いです!今にも何か出そうじゃないですかぁ」 「ぼ、ぼくを絶対守ってね、兄者!」 レッドとジローは顔を見合わせて、はぁ~~~っ…と深い溜息をつくばかりである。 「ほらほら、あそこの暗がりなんて、今にも亡霊とかが出てきそうですよ!」 「あそこの細い道から、血塗れの刀を提げた辻斬りとか出たら…!」 うわあーーーっ!と自分達の空想上の恐怖に震える二人は抱き合って叫んだ。 レッドとジローは怒りすら覚えず、ゲンナリとした表情で無視を決め込んだ。 「あらあら、そんな心配しなくても大丈夫よ」 そんな彼等に対して優雅に、幽雅に微笑んだのは西行寺幽々子である。 亡霊姫の異名に恥じぬ耽美にして端麗な笑顔は、まさに不気味な森に咲いた一輪の花。 「ヴァンプさんやコタロウをいじめるような悪い亡霊が来たら、私がやっつけてあげるわ。ね、妖夢」 「そうそう。辻斬りなんぞ、この妖夢が斬って捨てて御覧に入れましょう」 妖夢も年頃の少女らしい笑顔で、しかしその瞳に刃のような鋭い光を覗かせつつ腰に提げた剣を誇示する。 「うわぁ~…ゆゆちゃんも妖夢ちゃんも、カッコいい~」 「いやあ、近頃の娘さんは強いんですねー」 コタロウはすっかり尊敬の眼差しである。 ヴァンプ様もほっと一安心、その顔には余裕が戻っていた。 「…おい、ジロー。ツッコめよ、お前ら二人こそ亡霊と辻斬りだろー、って」 「無茶言わないでください。この世界でツッコミ役に回ると大変なんですよ」 「それでも貧乏クジを自分から引く甲斐性を見せろよ。百歳の年の功を見せろよ」 「おやおや、こういう時だけ年長者扱いですか。そういうあなたこそ、自分が泥を被ってこそのヒーローでは?」 チクチク嫌味を交わし合う二人だが、そもそもこんな会話自体が不毛だと気付いてすぐに口を閉ざした。 こういう時は、黙っているに限る。 「どうしたんです、レッドさんもジローさんもダンマリしちゃって」 「何でもねーよ…つーかお前、今、スゲー鼻声だぞ」 「え?ああ。昨日お布団しかずに寝ちゃったから、風邪気味かもしれませんねー」 ズルズルっと洟をすするヴァンプ様。 「大丈夫なの、ヴァンプさん。声がなんだか<ばん○うえいじ>みたいだけど」 「ああ。こいつ、鼻が詰まってっと<ば○どう>そっくりの声になるんだよ」 「へぇー。似てる似てる!」 「えー、そうかなあ。怪人の皆にもたまに言われるんだけど…」 「そっくりだよ。ねえねえ、一度モノマネしてみてよ。<ばんどうえ○じ>の!」 「これ、コタロウ。ヴァンプ将軍は風邪で苦しんでいるのに、ワガママを言ってはいけません」 「ははは、いいんですよ、これくらい」 ヴァンプ様はにこやかに、そしてちょっとしかめっ面になって、言い放つ。 「…ぼかぁねぇ~、ゆでたまごがぁ大好きでねぇ~」 ドカッ!と一斉に笑い声が起きた。 渋い顔をしていたジローですら、一瞬吹き出しかけた程である。 「似てるー!似てるよ、ヴァンプさん!」 「ぼかぁねぇ~、のイントネーションなんてまるで本人でしたよ!」 「すごいわ、ヴァンプさん。これはもう<ばんど○えいじのモノマネが上手い程度の能力>だわ!」 皆に褒められ、ヴァンプ様も満更でもなさそうにポッと顔を赤らめる。 その後頭部をはたくレッドさん。 もはやお約束の光景―――それにレッドは、どこか安心していた。 幻想郷は、現世とはまるで違う世界だ。 その中にいれば、レッドとて油断すれば空気に流されてしまう所だろう。 だが、ヴァンプ様の存在が…ここに来てもなお一切変わらず、神奈川県川崎市溝ノ口の匂いを垂れ流す彼の存在 がレッドを現実に繋ぎ止めている。 こんな世界に来たというのに、そんなものは何処吹く風とばかりに何も変わらないヴァンプ様。 「ヴァンプ…お前ってよ」 「はい?」 「結構、スゲー奴なのかもな」 「え…」 照れ臭そうに頬をかき、レッドは小さな声で言った。 「なんつーか…ありがとよ」 ―――その瞬間、仲間達は一斉に後ずさった。 その顔に浮かぶのは驚愕と衝撃、恐怖と呼んでも差し支えなかった。 「…なんだよ」 「い、いえ…あなたが急に、お礼なんて言うから…」 「レッドさん、絶対そんな事言わないと思ってたのに…意外な一面だよー」 散々な言われようである。普段の行ないというものが、如実に表れているといえよう。 「うふふ、でも何だかほっこりするわー。二人の間には、私達には分からない絆があるのね」 「やはり、この物語の本筋はレッドさん×ヴァンプ様という事ですね」 「えー、もう、やめてくださいよー(ぽっ)私とレッドさんはそんなんじゃなくて血で血を洗う壮絶な死闘を繰り広げる 血塗られたライバルなんですからねっ!…いたっ!もー、何で叩くんですか、レッドさん!」 「うるせー!気色わりー事ばっか言ってんじゃねー!」 もはやテンプレに入れてもいいくらいのいつものやり取りである。 「ほらほら。夫婦漫才はそこまでにして、行きましょう。ほら、紅魔館が見えてきましたよ」 妖夢の言葉に対しても、既に「誰が夫婦だ!?」とツッコむ気分にすらならず、レッドは顔を上げる。 ―――深い霧がかかった湖の畔。 鮮やかな深紅で統一された色調の、古めかしい洋館。 巨大な時計台が、重々しく時を刻んでいる。 何よりも館そのものが発する、ただならぬ妖気。 まさしく<紅き悪魔の舘>―――まともな神経の持ち主なら、近づこうともすまい。 「ふわ~…レミリアちゃん、こんなすごい所に住んでるんだね」 コタロウが首を思いっきり伸ばして見上げながら、感嘆する。 「姫様のお屋敷と、どっちが大きいかな?ねえ、兄者」 「あん?<姫様>って、誰だよ」 「北の黒姫」 ジローが語ったのは、レッドの初めて聞く名前だった。 「<真祖混沌>の名は、知っていますね?」 「ああ。何度か聞いたよ。史上最も偉大な吸血鬼だかなんだか」 「北の黒姫とは、真祖が直系の一人…私とコタロウは川崎に移住する前は、彼女の世話になっていたんです」 「あー、なるほど!」 その説明にポン、と手を打ったのは、ヴァンプ様である。 「つまり、ミミコさんの前にジローさんを養ってくれていた人って事ですね!」 「…………」 間違ってはいないのだろうが、言い方が悪すぎる。 まるでジローさんが女をとっかえひっかえしてる最低の<何か縛るモノ>だと言ってるようなものだ。 その場の空気がちょっと冷えたのに気付かず、ヴァンプ様は続ける。 「そう言えばレッドさんも、かよこさんの前にお付き合いしてた女性がいますよね。ほら、ちょっとキツイ感じの ホステスさん。それと同じですね、ははは」 「おい、ヴァンプ…」 「…ヴァンプ将軍」 「は…は」 二人の鋭い眼光は、もはや物理的な圧力さえ備えている。 やっとこ、ヴァンプ様は自分が地雷を豪快に踏み抜いた事に気付いたのであった。 レッドさんとジローが、ヴァンプ様の身体を両側から挟むようにして、持ち上げる。 腰を屈めて、力を込めて。そして。 ヴァンプ様を、真上へとブン投げた。 「「ダブル・ファルコン・アロー!」」 異様なまでに息の合った、謎の合体攻撃。 ああああああああ…!と、ドップラー効果によってヴァンプ様の叫びはどんどん遠くなり。 最高地点に到達し、落下を始めた瞬間に近づいていく。 そして、地面に墜ちた時、漫画的な<ヴァンプ様の形をした穴>が大地に穿たれた。 ダメージは150000。 画面には斜め線が入り、左上と右下にそれぞれレッドさんとジローさんのどやっとしたカットインである。 <解説> ダブル・ファルコン・アロー 合体攻撃(天体戦士サンレッド&望月ジロー) 気力制限130 攻撃力7000(フル改造時9000) 射程1~4 EN消費60 地形適正全てS やや火力に難のあるジローにとってはありがたい合体攻撃。 消費ENの割に高い攻撃力と優れた地形適正を持つので、強敵相手にドンドン使っていこう。 ただし、ジローはサンレッドに隣接していると、太陽闘気によって毎ターンHPが削られるので注意。 なお、元ネタは<BLACK BLOOD BROTHERS>短編集第一巻にてジローがコタロウに対して行なった折檻。 賢者イヴの血統に代々伝わる奥義、その名も<ファルコン・アロー>…らしい。 ジローさんは時々コタロウを殺す気としか思えないから困る。 閑話休題(それはともかく)。 紅魔館へと赴いた一行。 門番に招待状を見せて、庭園へと足を踏み入れて。 上方からの視線を感じて、二階のバルコニーを見上げる。 ―――宵闇に合わせたような、黒のイヴニングドレス。 ―――対照的に、両手には純白のレースの手袋。 ―――ヒールの高いブーツ。 <紅い悪魔>レミリア・スカーレットが、柵にもたれかかって、こちらを見下ろしていた。 ジローが帽子を取って会釈し、コタロウが笑顔で手を振ると、それに応えてレミリアも優雅に手を振る。 そして、レッドと目線がぶつかる。 太陽の戦士と、夜の申し子。 瞬間的に見えない火花が散り、熱風が吹き荒れた。 だが、この場でそれ以上の競り合いをするつもりはないらしい。 フン、と肩を竦めて、館の中へとその姿が消えていく。 それを見送り、レッドも肩の力を抜く。 やはり、幻想郷の強豪妖怪と向かい合うのは、レッドにとっても相当の緊張を伴うものだ。 特にそれが、凶悪極まりない真紅の吸血姫ともなれば。 「ねえ、レッドさん」 「あ?何だよ、コタロウ」 「レミリアちゃんって、ホントにレッドさんの事が大好きなんだね」 「はあ…?」 突然の珍説に、怒るより先に呆れてしまう。 「あの態度見て、どうやったらそう思えるんだよ。隙あらば殺してやるって面構えじゃねーか」 「だってさあ、レミリアちゃんって、本当に嫌いな相手だったら、そもそも無視するタイプだと思うんだ。なのに レッドさんには、ああやって突っかかるじゃない」 「はあ…」 「つまり、レミリアちゃんはツンデレさんなんだよ!」 「ありえねえ…」 「いや…ツンデレかどうかはともかくとして、一理ある気もします」 と、ジロー。 「吸血鬼にとって、太陽とは基本的に触れてはならない天敵であり、仇敵です…されど吸血鬼とて、かつては人間 であり、陽光を受けて生きていたのです。もはや手の届かなくなったその輝きは…あまりに眩しい過去の光だ」 「…………」 「レッド。吸血鬼にとって―――恐らくはレミリアにとっても―――その太陽の輝きを持つ戦士であるあなたは、 怨敵であると同時に、憧れなのでしょう」 「…どーでもいいよ、んなモン。少なくとも俺は、あのクソ生意気なガキが気に入らねー」 言い捨てて、レッドは紅魔館をもう一度眺め眇める。 血のように紅き屋敷は、何も語らず、静かに―――そして不気味に佇んでいる。 こんな所にやって来て、何も起こらない方がおかしかろう。 「へ…嵐の予感、って奴だな」 ちょっとニヒルでハードボイルドな男を気取るサンレッド。 「え!?嵐が来るんですか!?どうしよう、傘持ってないし、洗濯物取り込んでないですよ!」 天然でボケて、小突かれるヴァンプ様。 ―――緊迫感があるのかないのか分からない一同は、悪魔の巣窟へと今、一歩を踏み出すのだった。
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ひぐらしリレーSS① くすくす。気づいたかしら? ここは舞台。あなたは役者。 いい物語を期待しているわ。 参加者 秋香
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SS(シー・サーヴァント)/Sea-Servant 概要 2021年6月12日にカテゴリ化された「SS」と名のついたカード群。 属するモンスターは全て海竜族で統一されている。 融合・S・Xモンスターの効果で魔法罠を破壊しながらサーチして展開していくことで、《SS蒼龍のフォース》を中心としてビートダウンをする。 元々はSSのための作られたテーマ。 カード一覧 効果モンスター レベル8 《SS蒼龍のフォース》 レベル2 《SSメガバイト》 《SSラックス》 《SSレイドル》 《SSヴァストレイン》 《SSエスプリット》 《SSサンクレイム》 《SSディスナイト》 《SSデイズリー》 融合モンスター レベル10 《SSF緋色のレイジング・バスター》 レベル4 《SS緋色のレイジング》 シンクロモンスター レベル12 《SSF白妙のアスプロス・テリオス》 レベル4 《SS白妙のアスプロス》 エクシーズモンスター ランク8 《SSF漆黒のワイアーム・アネモス》 ランク2 《SS漆黒のワイアーム》 リンクモンスター リンク3 《SS蒼穴のラヴィーン》 魔法カード 通常魔法 《SSアウトブレイク》 永続魔法 《SSトルネード》 《SSボルテックス》 《SSリップス》 《SSホール》 フィールド魔法 《SSテリトリー》 罠カード 通常罠 《SSカウンターストライク》 永続罠 《SSブロックアウト》 関連リンク tron アルブロス アブレイズ ワイヴァルツ コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る